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25周年目突入前に回想 2-1 

クリスタープラザエム

そうして私の事務所は烏丸丸太町下がるのクリスタープラザエムという松吉画材所有のテナントビルに移った。
当時はすべてがまだアナログの時代であったので、画材屋が隣にあるというのは大変便利なことではあった。
今では画材屋の仕入れなどゼロだが、当時は毎月20万円以上の支払いがあったし、このビルに入ってからはさらに増えて、多いときには50万以上もの支払いがあった。
それを思うと今のデジタルの時代になって、費用的なメリットは大きいなとつくづく思う。

少しではあるけれど本や荷物も増えていたので、今回の引っ越しはレンタカーでトラックを借りることにした。
もちろん大きなトラックなど運転したこともなかったので、わざわざ軽トラを借りたのだけれど、当日レンタカーやへ行くと向こうの手違いで車が手配されておらず、すぐには用意できないと言われる始末。
今日が引っ越しであるのにどうしてくれるんだ!と、若気の至りでうなってしまったので、向こうもなんとか手を尽くし、2トン車を1台用意したので、今まで運転したこともない大きなトラックを借りて引っ越しを強行することとなった。

このビルには、1階に洋食屋、地下にパスタ屋があったので昼飯には苦労はなかったのだけれど、やはり飲食店が近くにあるとゴキブリや小さなはえが多いのに悩まされた。
ただ、地下鉄の駅も徒歩30秒、バス停はいくらでもあるし、飲み屋や喫茶店も山とあったので便利さでは今まで借りたことのあるの事務所の中でも最高だった。

クリスタープラザエム

引っ越して間無しの事務所内。広さは約10坪。プラス、トイレと炊事場(キッチンと呼べるようなものではなかった。)、そして物置。
ココでもやはり本棚は安物のカラーボックスを積み上げたものだった。
ただ、作業用の机は4人分用意できたし、念願の暗室(おくに見えるブルーの箱状のスペース。当時のデザイン事務所では必修)もおくことができた。
狭いがミーティングをする場所も確保できた。

前のワンルームマンションに比べると、かなり大きな進歩であったし、その分高揚感も相当なものだった。
事務所の横のパスタ屋に入っていく人たちが、いったい何の事務所なんだろう・・・というような目で見ていくのも、何か心地よかったし、名刺に書く住所が、今までよりもワンランクもツーランクも上がったように見えた。
ようやくデザイン事務所として世間に認知してもらえるような気がしたし、事実飛び込みで銀行が営業に来るようにもなった。

この頃、ささやかで敗北感が大きいものではあったけれど、初めての慰安旅行にも行けた。
メンバーも4名になり、アルバイトも頻繁に呼ぶようになって、一気に事務所に活気が出てきたのもこの頃だ。
さあ、いよいよという感じが自分の中にわき上がってくるのがはっきりと確認できたし、何よりも世の中がバブル1色に染まった頃だったことが大きかった。

今の若者はこのバブルというものを経験していないと思うが、あんなものは経験しない方がいいかもしれない。
何かと言えばすぐパーティー。クリスマスともなろうものなら街中がパーティーのような状態であった。
とくに、うちのお得意先はアパレル関係のところが多かったこともあり、クリスマスパーティーと忘年会で12月はほとんど仕事にならないような状態であった。

いまでも忘れられないことがある。
大阪へ仕事で行ったときのことだ。まだ、ヒルトンや富士フイルムのビルが建設中でディアモールさえなかった頃だ。私は打ち合わせをおえ、京都の事務所に戻ってまだまだ仕事が残っていることもあり、雪のちらつく12月の大阪駅前第3ビルあたりを足早に駅に向かっていた。
ちょうどバブル期のクリスマスイルミネーションが最盛期の頃であったのであたりはたいそう華やいだ雰囲気だった。丸ビルの横を通り過ぎようとしたときだった。私とほとんど同年代のビジネスマンのグループやカップルがクリスマスパーティーの真っ最中で、路上のイルミネーションをバックにシャンパンを飲みながら記念撮影をしている場面に出くわした。こっちはこれから京都まで帰って山ほど残った仕事をこなさなければいけないときに、そのうかれぽんちな様子は正直きついものだったし、私は今になってもそのときの光景を忘れることはない。

余談になるが、景気が悪くなって会社にリストラされたり、居場所がなくなった社員のことがニュース番組などで取り上げられることが良くあるが、そういうときに私は同情するような気持ちになったことがない。会社が調子のいいときには自分のやったこと以上の成果をもらえるのだから、会社が調子の悪いときにはじかれるのは当たり前のことだ。少しでも自分で商売をしたことがある人であれば当然の感覚だと思うし、自分がしてきたビジネスの価値を評価されるのは商売の基本中の基本である。

なにはともあれ、新しい場所でのコイズミデザインファクトリーは、世の中の好景気にも助けられ、順調な滑り出しを見せたのだ。

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